医療用大麻は本当に病気を治すのか?現代医学が研究するカンナビノイドの可能性

CBDについて調べ、さらに日本と大麻の歴史を調べていくと、次に気になるのが医療用大麻ではないでしょうか。

「大麻には病気を治す力があるのだろうか」

そんな疑問を持つ人もいると思います。

特に病気や慢性的な症状に苦しんでいる人にとって、新しい治療法に希望を感じることは自然なことです。

しかし、ここで大切なのは「大麻は病気を治す」と簡単に結論づけないことです。

大麻にはさまざまな成分が含まれており、その代表がTHCとCBDです。

そして、医学研究では、これらを含むカンナビノイドについて、さまざまな病気や症状を対象に研究が行われています。

一方で、研究結果は病気によって異なり、効果が確認されているものもあれば、まだ十分な evidence がないものもあります。

だからこそ今回は、「医療用大麻」という言葉だけで考えるのではなく、現代医学がカンナビノイドについて何を調べ、どこまで分かっているのかを見ていきます。

目次

医療用大麻とは何なのか

出典:はっぱ画像

まず知っておきたいのは、「医療用大麻」という言葉だけでは、使われるものの中身が分からないということです。

大麻草にはTHCやCBDをはじめ、さまざまなカンナビノイドが含まれています。

厚生労働省の情報では、カンナビノイドは大麻植物に含まれる物質群で、THCとCBDが代表的な成分として挙げられています。

そして医学研究では、植物そのものだけではなく、特定の成分を精製した医薬品や、成分を一定に調整した製剤なども研究されています。

ここが、一般にイメージされる「大麻を使うこと」と、医学的な意味でのカンナビノイド治療との大きな違いです。

THCとCBDは同じものではない

大麻について考えるとき、THCとCBDを同じものとして扱わないことが非常に重要です。

THCは精神作用を持つ主要なカンナビノイドであり、CBDとは作用の性質が異なります。

厚生労働省の資料でも、THCとCBDは主要なカンナビノイドとして区別されています。

CBDについては、海外で医薬品として承認された例があります。

アメリカのFDAは、精製されたCBDを有効成分とするEpidiolexを、レノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群、結節性硬化症に伴う発作の治療に承認しています。

これは「CBDなら何の病気にも効く」という意味ではありません。

特定の成分を、特定の病気に対して、決められた用量や品質管理のもとで医薬品として評価した結果です。

この違いを知ることが、カンナビノイドを正しく理解する第一歩になります。

「大麻が効く」と「医薬品として効果が確認された」は違う

インターネットでは、「大麻が○○に効いた」という体験談を見かけることがあります。

その体験そのものを否定する必要はありません。

しかし、一人の体験と、医学的に治療効果が確認されたことは同じではありません。

医学では、プラセボとの比較や複数の患者を対象とした臨床試験などを通して、治療による変化なのか、それとも別の要因による変化なのかを調べます。

さらに、効果だけではなく副作用や長期的な安全性についても確認する必要があります。

そのため、「自分には効いた」という体験は、その人にとって大切な情報ではあっても、そのまま「この病気に効く」という医学的結論にはできないのです。

どんな病気について研究されているのか

カンナビノイドについては、実に多くの病気や症状が研究対象になっています。

2022年に発表された大規模な系統的レビューとメタ解析では、152件のランダム化比較試験、合計12,123人の参加者を対象に、慢性疼痛、痙縮、吐き気や嘔吐、食欲、てんかんなど幅広い領域について検討されています。

その研究では、カンナビノイドの種類によって効果の程度やエビデンスの質が大きく異なることが示されています。

CBDについては、てんかんに対する効果について比較的強いエビデンスが示され、パーキンソニズムについても中程度のエビデンスが示されました。

一方、その他の多くの効果については、エビデンスの質が低い、非常に低い、あるいは効果を確認できないものもありました。

つまり、「カンナビノイドには医学的な可能性がある」ということと、「カンナビノイドなら何でも病気を治せる」ということは、まったく違うのです。

てんかんではCBDの研究が進んでいる

カンナビノイドの医学研究の中で、特に注目されているのがてんかんです。

CBDについては、特定の重症てんかん症候群に伴う発作に対する医薬品として、アメリカFDAの承認があります。

ここで大切なのは、「CBDを摂ればてんかんが治る」という話ではないことです。

承認されているのは、特定の疾患と年齢などの条件において、一定の品質と用量が管理された医薬品です。

同じCBDという名前が付いていても、市販されているCBD製品と医薬品が同じものとは限りません。

この違いを知らずに、「医薬品で効果が認められているから、市販のCBDでも同じ効果がある」と考えることはできません。

慢性的な痛みに対する研究も行われている

慢性疼痛も、カンナビノイド研究の大きな分野です。

2025年に公表されたAHRQの生きた系統的レビューでは、慢性疼痛に対するカンナビノイド製品について、2025年4月までの研究を対象に評価が行われています。

研究では、THCとCBDの比率や、合成された成分なのか、精製された成分なのか、複数の成分を含む植物由来製品なのかによって結果が異なることが検討されています。

2025年のレビューでは、一部のTHCを含む製剤について短期間の痛みの軽減が示唆される一方、めまい、鎮静、吐き気などの副作用も増える傾向が確認されています。

つまり、痛みに対する研究でも「効くか効かないか」の二択ではありません。

どの成分を使うのか。

どのくらい使うのか。

どのような患者に使うのか。

どんな副作用があるのか。

こうした条件を含めて考える必要があります。

がんに効くという話は慎重に考えたい

大麻やCBDについて調べていると、「がんに効く」という情報に出会うことがあります。

しかし、ここは特に慎重に考える必要があります。

カンナビノイドには、がん細胞を対象とした基礎研究などもあります。

しかし、細胞や動物で何らかの作用が確認されたことと、人間のがん患者に対する治療効果が確認されたことは同じではありません。

また、カンナビノイド医薬品には、がん化学療法に伴う吐き気や嘔吐など、症状を対象として研究されてきた領域があります。

「がんそのものを治療すること」と「がん治療に伴う症状を和らげること」は、分けて考える必要があります。

病気で苦しんでいる人に希望を届けたいからこそ、この違いを曖昧にしないことが大切なのだと思います。

不安や心の症状についてはまだ慎重さが必要

CBDや大麻については、不安やうつ、PTSDなど精神面への効果を期待する声もあります。

しかし、精神疾患についての研究は、てんかんなどとは状況が異なります。

2019年の系統的レビューでは、うつ病、不安症、PTSD、ADHD、トゥレット症候群、精神病などについて、カンナビノイドの効果を支持する十分な証拠は得られていないとされています。

さらに2025年までの研究を含む新しいレビューでも、精神疾患に対するカンナビノイド研究は不確実性が大きく、第一選択治療として支持するには証拠が不十分だとされています。

だから、「不安に効くかもしれない」という話を見つけたときには、研究があることと、治療法として確立していることを分けて考える必要があります。

THCには注意しなければならない

医療用大麻という言葉を聞くと、CBDだけをイメージしてしまう人もいるかもしれません。

しかし、THCを含むカンナビノイドには精神作用があり、リスクについても研究されています。

研究では、THCの投与によって精神症状が悪化する可能性が示されており、特に精神病症状との関係には注意が必要です。

また、近年のレビューでは、高濃度THCの使用について依存や精神・認知面などのリスクが指摘されています。

だからこそ、医療目的で研究されているカンナビノイドと、自己判断で使用する大麻を同じものとして考えてはいけません。

日本では医療用大麻をめぐる法律も変わった

ここで第2弾の歴史とつながります。

日本では2024年12月12日から、大麻草から製造された医薬品の施用を可能とするための法改正が施行されました。

それまでの大麻取締法は「大麻草の栽培の規制に関する法律」へと名称が変更され、大麻に関する規制は麻薬及び向精神薬取締法と組み合わせて行われる形へ変わりました。

そして2025年3月1日からは、大麻草から医薬品の原料を採取する目的で栽培する「第二種大麻草採取栽培者」の制度も始まっています。

つまり、日本でも大麻草由来の医薬品を医学の世界から完全に切り離すのではなく、厳格な管理のもとで医療利用を可能にする方向へ法律が変わったのです。

ただし、日本で大麻由来医薬品が自由に使えるわけではない

ここは誤解してはいけないところです。

2025年12月の厚生労働大臣会見では、日本ではその時点で薬機法に基づいて薬事承認された大麻草由来医薬品はないと説明されています。

つまり、法律上「大麻草から製造された医薬品を使えるようにする制度」が整えられたことと、患者が現在自由に大麻由来医薬品を入手して治療できることは別の話です。

医薬品として実際に使用するためには、有効性、安全性、品質などについて薬事上の評価を受ける必要があります。

これは、患者を守るためにも重要な仕組みです。

「病気を治す」と「症状を和らげる」は違う

医療用大麻について考えるとき、最も大切なポイントの一つがここです。

薬には、病気そのものを治療するものもあれば、病気に伴う症状を和らげるものもあります。

例えば吐き気を抑える薬が、吐き気の原因となっている病気そのものを治すとは限りません。

痛みを和らげる薬が、痛みの原因となっている病気そのものを治すとも限りません。

カンナビノイドについても同じです。

研究で効果が確認されている場合でも、それが発作を減らす効果なのか、痛みを和らげる効果なのか、吐き気を抑える効果なのかを分けて考える必要があります。

だから「医療用大麻は病気を治すのか」という質問には、一言で答えるのではなく、「どの成分を、どの病気に、どの目的で使うのか」と考える必要があるのです。

CBDにも「可能性」と「分からないこと」がある

CBDについても同じです。

すでに特定のてんかんに対する医薬品として有効性が確認されている一方で、CBDを含むすべての製品が同じ効果を持つわけではありません。

また、CBDについて研究が進んでいるからといって、あらゆる病気への効果が科学的に証明されたわけでもありません。

厚生労働省のeJIMでも、カンナビノイドについて特定の疾患や症状に対する可能性が紹介される一方、副作用などについても注意が必要とされています。

だから私は、「CBDには可能性がある」と「CBDなら病気が治る」を同じ意味にしないことが大切だと思います。

可能性があるから研究する。

効果が確認できれば医薬品として評価する。

まだ分からないことについては、研究を続ける。

これが科学の基本的な姿勢なのではないでしょうか。

病気で苦しんでいる人にこそ、正確な情報が必要

病気になると、人は少しでも希望のある情報を探したくなります。

それは決して悪いことではありません。

「治りたい」と願うことも自然なことです。

新しい治療法に希望を持つことも自然なことです。

しかし、希望が大きいほど、情報を慎重に見ることも大切になります。

「これで治った」という体験談だけを見るのではなく、その情報がどのような研究から生まれたものなのかを確認する。

「研究されています」という言葉だけで期待するのではなく、人を対象にした臨床試験なのか、動物実験なのか、細胞を使った基礎研究なのかを確認する。

そして、効果だけではなく副作用についても知る。

それが、自分の身体を大切にすることにつながります。

医療用大麻は「希望を捨てる」話ではない

ここまで読むと、「では大麻には何も期待できないのか」と思う人もいるかもしれません。

私は、そういう話ではないと思います。

むしろ研究が進んでいるからこそ、期待できる部分と、まだ分からない部分が見えてきています。

特定のてんかんではCBDを利用した医薬品の有効性が確認されています。

慢性的な痛みなどについても、一定の効果を示す研究があります。

一方で、効果の大きさやエビデンスの質にはばらつきがあり、副作用にも注意が必要です。

だからこそ、これからの研究には意味があります。

分からないから研究する。

可能性があるから確かめる。

そして、効果が確認されたものを安全に医療へつなげていく。

それが科学によって希望を現実に近づけていく道なのだと思います。

病気を治したいという願いを、科学と一緒に持っていく

病気になったとき、「治りたい」と願うことは決して悪いことではありません。

むしろ、これからの人生をあきらめないためにも、その願いを持ち続けることは大切です。

ただし、その願いを一つの方法だけに託す必要はありません。

CBDに可能性を感じるなら、まず正しい情報を知る。

医療用大麻について期待するなら、どの成分がどの病気に研究されているのかを知る。

そして必要な治療については、医師などの医療専門家と相談しながら進めていく。

「願うこと」と「科学的に確かめること」は、決して対立するものではありません。

病気を治したいという願いを持ちながら、科学によって一つずつ可能性を確かめていく。

そんな姿勢こそ、病気と向き合う人にとっての新しい希望になるのではないでしょうか。

次回の第4弾では、CBDで病気は治るのか? につながります。

第1弾:CBDは病気に役立つのか?木下翔太郎に学ぶ、CBDの可能性と正しい向き合い方

第2弾:なぜ日本では大麻が禁止されたのか?日本人と大麻の歴史を深掘り

第3弾:医療用大麻は本当に病気を治すのか?現代医学が研究するカンナビノイドの可能性

第4弾:CBDで病気は治るのか?科学的に分かっていることと、まだ分からないこと

覗いてやってください、よろしく

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第3弾まとめ

第1弾では、CBDには可能性がある一方で、正しく知ることが大切だということを考えました。

第2弾では、日本人と麻の長い歴史をたどり、なぜ大麻が現在のように規制されるようになったのかを見てきました。

そして第3弾では、現代医学がカンナビノイドをどのように研究しているのかを見てきました。

そこから見えてくるのは、「大麻は良い」「大麻は悪い」という単純な答えではありません。

THCなのかCBDなのか。

植物そのものなのか、成分を精製した医薬品なのか。

どの病気を対象にしているのか。

症状を和らげるのか、病気そのものを治療するのか。

どの程度の科学的根拠があるのか。

そして、どんな副作用があるのか。

こうしたことを一つずつ分けて考えることが大切なのです。

病気で苦しむ人に必要なのは、根拠のない希望でも、最初から可能性を否定することでもありません。

「分かっていること」と「まだ分からないこと」の両方を知ったうえで、それでも未来に希望を持つことなのだと思います。

CBDやカンナビノイドの研究は、まだ続いています。

だからこそ、これから何が分かっていくのかを見守る価値があります。

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