「病気を治したい」と願っていい!エミール・クーエに学ぶ、心に希望を届ける自己暗示の力

「病気になると、私たちの心はいつの間にか病気のことばかりを考えるようになります。

「治るだろうか」

「また悪くなったらどうしよう」

「この先、どうなってしまうのだろう」

そんな不安が頭の中を何度も行き来することがあります。

そんなとき、無理に前向きになろうとしなくてもいいのではないでしょうか。

「病気を治したい」と願うことも、「元気になりたい」と願うことも、そのまま大切な願いとして持っていていいのです。

フランスの薬剤師だったエミール・クーエさんは、人間が自分自身に働きかける「自己暗示」という方法を広めた人物として知られています。

クーエさんの著書には、自己暗示についての考え方や実践方法がまとめられており、1922年に出版された『Self Mastery Through Conscious Autosuggestion』は現在も原文を確認することができます。

この記事では、クーエさんの考えを「病気を思えば治る」という単純な話としてではなく、病気と向き合う人が自分の心に希望を届けるための考え方として見ていきたいと思います。

目次

エミール・クーエとは、どんな人だったのか

エミール・クーエさんは、1857年にフランスで生まれ、1926年に亡くなった薬剤師であり、心理学的な考察を重ねながら「意識的自己暗示」という方法を広めた人物です。

現在では「毎日、あらゆる面で、私はますます良くなっている」という言葉で知られることが多いクーエさんですが、最初から自己暗示を教える心理家だったわけではありません。

もともとは薬剤師として、人々に薬を渡す仕事をしていました。

ここが、クーエさんを理解するうえで、とても重要なところです。

クーエさんは、薬そのものだけではなく、薬を受け取る人の「心の状態」にも関心を持つようになっていきました。

同じような薬を使っていても、人によって受け止め方が違い、その違いが身体の状態にも影響しているように見えることがあったからです。

後のクーエさんの考え方には、こうした薬剤師時代の観察が大きく関係していったと考えられます。

Library of Congressに収蔵されているクーエさんの著作や当時の資料を見ると、彼の活動は単なる精神論ではなく、暗示や自己暗示を人間の心と身体の関係から考えようとする試みだったことが分かります。

薬剤師だったクーエが「心と身体」に注目した理由

クーエさんの面白さは、心だけを見ていた人物ではなかったことです。

薬剤師として現実の身体と向き合っていたからこそ、心が身体にどのような影響を与えるのかという問題に関心を深めていきました。

当時のクーエさんは、薬を渡すときに、その薬についてどのような言葉をかけるかということにも注目していたと伝えられています。

薬そのものは同じでも、「この薬を使えば良くなるでしょう」と伝えられた人と、何の説明もなく薬を渡された人では、受け取るときの心理状態が違います。

そこからクーエさんは、人間の心には、自分自身に影響を与える力があるのではないかと考えるようになりました。

これは、後にクーエさんが「暗示」を重視するようになる重要な出発点でした。

ナンシーという町で「暗示」の世界と出会った

クーエさんの人生を語るうえで、フランスのナンシーという町も重要な意味を持っています。

19世紀末のナンシーでは、催眠や暗示について研究する流れが生まれていました。

クーエさんは1885年から1886年にかけて、催眠や暗示の研究で知られたアンブロワーズ=オーギュスト・リエボーさんの仕事を見たり、その考え方に触れたりしたと当時の資料に記されています。

この経験は、クーエさんのその後の人生に大きな影響を与えました。

人間は外から与えられる薬や治療だけによって変化するのではなく、自分の心の中にある思いや言葉からも影響を受けるのではないか。

クーエさんは、そうした問題を長い時間をかけて考えていくことになります。

すぐに有名になったわけではなかった

ここも、クーエさんの人生で大切なところです。

クーエさんは、最初から世界的な人物だったわけではありません。

資料によれば、経済的な余裕が十分にあったわけではなく、生活のために仕事をしながら、暗示や自己暗示について研究を続けていました。

つまり、クーエさんの人生は「ある日突然、素晴らしい方法を発見して成功した」という単純な物語ではありません。

薬剤師として人間を観察し、暗示について学び、実際の経験を重ねながら、自分なりの考え方を少しずつ形にしていったのです。

この姿勢は、クーエさんを理解するうえで非常に重要だと思います。

なぜなら、クーエさんが伝えた「自己暗示」は、単なる前向きな言葉の繰り返しから生まれたものではないからです。

そこには、人間の心と身体を長い時間観察してきた経験がありました。

クーエさんの面白さは、最初から精神論を語る人物だったわけではないところにあります。

クーエさんは薬剤師として、実際に薬を扱う仕事をしていました。

その経験の中で、人間の心と身体の関係について考えるようになっていきます。

薬を飲む人が、その薬にどのような期待を持っているのかということも、クーエさんにとって興味深いテーマでした。

クーエさんについて紹介される有名なエピソードがあります。

ある女性が、強い苦しみを抱えてクーエさんの薬局を訪れ、特定の薬を求めたと伝えられています。

しかし、その薬をそのまま調剤することができない事情がありました。

そこでクーエさんは、その女性のために水を使ったものを用意し、それを薬として渡したという逸話があります。

そこから暗示という考え方に関心を深め、ナンシーを中心とした暗示研究の流れの中で、自分自身に働きかける自己暗示の方法を発展させていきます。

ここから見えてくるのは、身体だけを見るのではなく、その人の心も含めて考えようとしたクーエさんの姿です。

もちろん、現代医学から見れば、自己暗示だけですべての病気を治せると考えることはできません。

しかし、病気と向き合っている人の心に希望があることの意味を考えるきっかけとして、クーエさんの思想には今でも興味深い部分があります。

クーエがたどり着いた「自分で自分に言葉を届ける」という考え方

やがてクーエさんは、他人から暗示を受けることだけではなく、自分自身で自分に暗示を与えることに注目するようになります。

それが「意識的自己暗示」です。

Library of Congressの資料では、クーエさんの著作「Conscious Autosuggestion」が1924年に刊行されたことが確認できます。

また、Library of Congressの解説では、クーエさんはフランスの心理学者・薬剤師として紹介され、1920年代に「意識的自己暗示による自己支配」という方法を広めた人物として説明されています。

つまりクーエさんが伝えようとしたのは、「誰かに救ってもらう」という考え方だけではありませんでした。

自分自身の心に、自分で言葉を届けていくという考え方だったのです。

「私はますます良くなっている」という言葉へ

そして、クーエさんの名前を世界的に知らしめることになったのが、あの有名な言葉です。

「毎日、あらゆる面で、私はますます良くなっている」

英語では「Day by day, in every way, I am getting better and better」と表現されます。

当時のクーエさんを紹介する資料にも、この言葉が掲載されています。

この言葉を知ると、「病気を治すために無理やり自分を励ます言葉」と受け取ってしまうかもしれません。

しかし、クーエさんの考え方をもう少し深く見ていくと、単純な精神論ではなかったことが分かります。

クーエさんが考えていたのは、毎日の生活の中で自分自身に繰り返し言葉を届けることによって、その言葉を心の中に根づかせていくということでした。

「私は少しずつ良くなっている」

「私は落ち着いていい」

「私はこれからも人生を歩いていく」

そんな言葉を繰り返し、自分の心に届けていくのです。

クーエさんが現代の私たちに伝えてくれること

私たちは、普段から自分自身にたくさんの言葉をかけています。

「もう駄目かもしれない」

「また悪くなったらどうしよう」

「自分には無理だ」

「どうせ変わらない」

そんな言葉が頭の中を繰り返し流れていることもあります。

もちろん、不安になること自体が悪いわけではありません。

病気になれば、不安になるのは自然なことです。

だからこそ、クーエさんの考え方を現代の私たちが受け取るなら、「不安を持ってはいけない」という話ではないのだと思います。

むしろ、不安な自分を責めるのではなく、その自分に対して、もう一つ別の言葉を届けてあげることなのではないでしょうか。

「今日は少し楽になれたらいい」

「できることを一つやってみよう」

「私は治りたいと思っていい」

「これからの人生も大切にしたい」

そんな言葉でもいいのです。

クーエさんの人生を調べていくと、そこには「病気になったら心で治せばいい」という単純な教えではなく、人間の心が自分自身に与える影響を長い時間考え続けた一人の薬剤師の姿が見えてきます。

そして、その考え方が後に「自己暗示」という形で多くの人に伝わっていきました。

だからこそ、クーエさんを知るときには、「自己暗示で病気が治るのか」という一点だけを見るのではなく、「私は普段、自分自身にどんな言葉を届けているのだろう」と考えてみることが大切なのかもしれません。

それが、エミール・クーエさんという人物を知る最初の一歩になるのではないでしょうか。

願いを諦めない人の心には、未来があります

・病気だけを見るのではなく、治った後の人生を見る

病気になると、どうしても意識が病気へ集中します。

もちろん、病気と向き合うことは必要です。

しかし、人生のすべてが病気になってしまう必要はありません。

「もし元気になったら、私は何をしたいだろう」

そう考えると、「病気を治す」という目的の先に、もう一つの人生が見えてきます。

それは「病気のない人生」ではなく、「自分が生きたい人生」です。

・自分の心に、どんな言葉を届けていますか

私たちは、毎日、自分自身にたくさんの言葉をかけています。

また、たくさんの言葉を引き出そうとしています。

その多くは、無意識に発しています。

「どうせ無理」「また悪くなる」「自分にはできない」「きっと失敗する」

「今日もよく頑張っている」「少しずつ良くなっていけばいい」「私は自分を大切にしていく」

「元気になったら、あれをしてみたい」

毎日、自分自身や周りにどんな言葉を届けているだろう?

そして、もし少し変えてみたいと思ったら、ほんの少しだけ言葉を変えてみればいいのです。

クーエさんの自己暗示を、このような未来への意識と結びつけて考えることもできるのではないでしょうか。

エミール・クーエさんが残した自己暗示という考え方を、現代の私たちが受け取るとしたら、私は「自分の心に希望を届ける方法」として考えてみたいと思います。

自分自身にどんな言葉を届けながら人生を歩いていくのかを考えるきっかけにはなります。

そして、自分の心に希望を届けることは、今の自分を大切にすることでもあります。

エミール・クーエさんが教えてくれるのは、「自分自身に、少し優しい言葉を届けてみよう」ということなのではないでしょうか。

願いを諦めない人の心には、未来があります。

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まとめ

エミール・クーエさんの人生をたどってみると、そこには「病気を心だけで治す」という単純な考え方ではなく、人間の心と身体の関係を見つめ続けた一人の薬剤師の姿が見えてきます。

薬剤師として患者さんと接する中で、クーエさんは薬そのものだけではなく、患者さんが薬に寄せる期待や、かけられた言葉によって変化する心にも関心を向けました。

そして、人から与えられる暗示だけではなく、自分自身で自分に言葉を届ける「自己暗示」という考え方へ進んでいきました。

クーエさんが残した「毎日、あらゆる面で、私はますます良くなっている」という言葉は、今でも多くの人に知られています。

けれど、この言葉を「絶対に病気が治る」と自分に言い聞かせるための魔法の言葉として受け取る必要はありません。

大切なのは、自分の心を病気への恐怖だけでいっぱいにしないことです。

病気になると、「また悪くなったらどうしよう」と考えてしまう日もあります。

「本当に治るのだろうか」と不安になる日もあります。

そんな日があっても、自分を責めなくていいのです。

信じられない自分がいてもいいのです。

不安になってしまう自分を否定するのではなく、その自分にもう一つの言葉を届けてあげればいいのです。

「治りたい」

「少しでも良くなりたい」

「元気になったら、もう一度やりたいことがある」

そんな願いを持つことは、決して悪いことではありません。

むしろ、これからの人生を大切にしたいと思っているからこそ、「病気が治りたい」と願うのではないでしょうか。

だから、病気だけを見つめ続けるのではなく、病気が良くなった後の人生にも目を向けてみてください。

どこへ行きたいのか。

誰と過ごしたいのか。

何をしてみたいのか。

どんな自分になりたいのか。

そこに目を向けることで、心の中に新しい未来を描くことができます。

もちろん、自己暗示だけに頼る必要はありません。

必要な医療や治療を受けることも大切です。

身体を整えることも大切です。

そして同時に、自分の心にも希望の言葉を届けてあげるのです。

今日、ほんの少しだけでも「良くなりたい」と思えたなら、それで十分です。

明日になって、また不安になっても大丈夫です。

そのたびに、自分自身に優しい言葉を届ければいいのです。

エミール・クーエさんが教えてくれた自己暗示の本当の意味は、自分自身を無理やり変えることではなく、自分自身に希望を語りかけ続けることなのかもしれません。

「病気が治りたい」と願っていいのです。

「元気になりたい」と願っていいのです。

「もう一度、人生を楽しみたい」と願っていいのです。

それでも、心のどこかに小さな希望を残しておく。

その小さな希望が、明日を生きる力になることがあります。

あなたの人生は、病気だけで決まるものではありません。

願いを諦めない人の心には、未来があります。

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